浮いたり沈んだり
チーム状況が悪くなってくると、どこのチームも責任論なり吊るし上げなど起きる。上位カテゴリー、下位かかわらずJを目指すセミプロチームでもおきる。
我がクラブ、サガントスは今年は成績不振。ここ数年は昇格争いにギリギリだが絡んできて、中堅の活きがいいチームという評価を得ていたが、今年はもはや脱落と言って良いだろう。
そうなってくると、もちろん責任論が沸いてくる。コーチ陣が悪い、スタッフが悪い、選手がダメ、フロントがトロいとか。いろいろな声が出てくる。
最初に書いたけど、負けだすとこうした声はほとんどのクラブで起きる。問題がない組織などどこにもないのだが、負けるとそのストレスがこうした形で噴出してくるのだ。これは、サッカーだけじゃなく、プロ野球だって起こる。勝ってりゃ当面文句言われないのはどこでも同じだ。
でも、野球ってどこかおおらかだ。クビにはなるんだが、悲壮感があんまりない。どうしてかって考えたら、野球の場合、所属するチームが簡単に潰れるという事が少ないからじゃないかと思う。最近は経営危機のチームがあったりするが、基本的に赤字が出ても親会社が広告費として補填する構造があり、企業丸抱えの経営だから、期末に問題が噴出して解散危機とかがあんまりない。
企業丸抱えの構造と一言で言っても、広島は市民球団というし、ちゃんとしたデータをとってないので、印象論にすぎないかもしれないけど。
話を元に戻そう。クラブを長年支えてきたサポーターは、クラブの内情に詳しい。ボランティアの方々も、経営的にどうかはわからないにしても、まさに人が動くその現場を知っているはず。
本当に経営状況を正しく知るならば、決算書を精査するとともに現場の状況をよく見ないと、本当の事はよくわからないが、井川会長が中古のビジョンを自分のポケットマネーで鳥栖スタに取り付けたり、松本監督が北部グラウンドに更衣室を自腹で建設したり、選手や監督の年俸がカットされたとか、そういうニュースというかうわさを耳していれば、ギリギリの経営をしていることは普通の人であれば、ある程度想像はつく。
そういう人ほど、クラブに近い立場となり、経営を心配する。ある選手が活躍しないからといって、簡単にいい選手を入れられない、勝てないからといって監督フロント総取替えとか簡単に体制転換できない、何をやるにもお金はかかるし、簡単な事ではないと薄々感じているだろう。
そして、クラブに親心のような心情を持たない人は、「プロである事」を錦の御旗にして、監督がダメなら替えればいいし、選手がダメならクビにしていい選手を取ってくればいいと考える。なにせ「プロ」なんだろ、お前らと。
某掲示板などで見てても、この二つの立場でいい争っている事が多い。僕もどっちかと言えば経営的な立場で考えたりするので、無駄に人件費を増やすよりも、出来る範囲でやっていくべきだと思っている。「プロ」と言えど、強くする為にお金をつぎ込んでクラブが潰れては本末転倒だ。分不相応の住宅ローンで破綻するサラリーマンみたいなもんだ。ちょっと違うか。
でも、後者のダメなら取り替えようプロだから派の方の、そういう発言は否定しない。僕が、「クラブが潰れるから無理はできん」と言うのと同じように、「ダメだクビにしろ」と言う権利はある。
正論めいた事を言いたくてこの結論にたどり着いたのではない。経営の事をよくよく考えていくと、このクラブをより成長させるには、より多くの支持者を増やすことが必要だと思ったからだ。少なくとも試合に足を運んでくれる人々は、サガンに少しでも興味がある方だ。いくら文句を言おうがダメだ何だと言おうと、少なくとも味方である事には変わりない。
それに、こうした声は、クラブに深く関与していく上で、最初のステップだと思う。どうしてクラブは補強をしないのか。どうして自前の練習場をもてないのか、どうしてお金が無いのか、深く考えていく入り口だ。
だから、自分も反省しないとと思ったのだが、そうやって言い争っている現実こそ、認めなければいけないのだと思う。どちらが正しいとかではなく、どちらも正しい。いろいろな人を受け入れる事ができるオープンなクラブになる事の方が、このクラブが成長していける可能性は大きいと改めて思い返した。
蛇足だが、そういうオープンなクラブになる事から考えると、ローカル性に拘らないほうがいい。知っている人は知っていると思うが、井川会長は最初にチームを引き受ける時「ドリームス」に名前を変えようとした。しかし、サポーターの思いを受けて「サガントス」の名前を残した。よく考えれば。「佐賀の鳥栖」なんて、最高にローカルなチーム名だ。
僕も、サガントスという名前には愛着があるし、今更変えるのもパワーがいるなと思う。難しいところだが、ローカル性はなるべく出てきて欲しくないと思っている。
相変わらず何がいいたいのかわからなくなってきたが、ようするに生き残るために万人に広く受け入れられるチームを目指しましょうって事だろう。たぶん。
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