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Jリーグ村井 満チェアマンの講演会に行ってきた

      2016/11/16

毎年ブリヂストンとサガンドリームスの共催で、サッカー関連の著名人の後援が行われている。今年は村井満チェアマンの講演。いつもは多忙な上抽選で外れたりするので、一度行ったきりとなっていたが、今年は追加募集が行われていたので、行って見る事にした。

それにしても例年抽選になる講演会なのに、追加募集まで行われるとは、認知度があまり高くないのだろう。9月頃に来年からの放映権が英Perform Groupが運営するダゾーンが2100億で買うという事で、長年Jリーグのパートナーだったスカパーを切るとはやるなと思っていた所だったので、ちょうどよい機会だった。巨額放映権でバブったプレミアなどを見ても、ローカルな市場でしか売れないJリーグは、収益の面でジリ貧であった。そのあたりは、氏の著作「Jリーグ再建計画」に詳しい。

上記の本について過去に書いた記事です。

クラブ経営サッカークラブ経営という無理ゲー
「Jリーグ再建計画」を読む 先日この本を読みました。 某ブログにて発見し、久々にクラブ経営関連の本を手に取りました。...

Jリーグの課題とチェアマンの打つ手。

演題が「地域にプロスポーツがあること~豊かなスポーツ文化の発展を目指して~」で、主にJリーグの現状、展望についてがメインだった。チェアマン就任3年目を迎えられる。2010年代のJリーグは観客動員数や収益面で微減で、危機的な状況にあった。これも前で紹介した書籍に書いてある。

日本代表チームばかりが欧州で活躍する選手のおかげでブランド力がどんどん上がり、一方でJからはスター選手の流出などで衰退していく。そんな現状に対してチェアマンとしてとった手は次の二つ。1)ブランド価値を上げる為のプロモーション 2)育成に力を入れる。

プロモーションに関しては、専任のシステム担当を雇用しているクラブがひとつもない事を鑑み、Jクラブが共通で使えるシステムを開発したり、youtubeを使うなどの取組を紹介。

育成に関しては、欧州各国の例を上げ、技術面だけでなく、人間力を育てる重要性を説く。もちろん技術面でも、オランダのサッカー分析の専門会社に、ドイツのクラブも受けているというユース組織の評価するテストを導入して、現状を確認しようと取り組んでいる。

その他にも、専用スタジアムなどのインフラや、フロント人材の育成学校の話など、Jリーグを取り巻く諸々のトピックスが上がった。中でも興味深かったのが、ダゾーンとの契約と、アジア市場のお話。

Perform Groupとの巨額契約

ダゾーンとは、英Perform Groupが運営する動画コンテンツのプラットフォームのブランド名。電波を通したテレビ放映でなく、ネット中継を行う。長年テレビで視聴してきたサッカーファンからすると、多少違和感がある。

肝心の契約内容は、10年間で2100億円。これを年換算して210億円。これをJ1からJ3までのクラブで分け合うこととなる。

巨額契約と言っても、欧州と比べるとやはり見劣りがする。当日配布されたパンフレットによれば、プレミアの放映権3210億円(営業収益中53%)ブンデス1004億円(同30%)Jリーグ50億円(同5%)。年間210億円に大幅アップと言えど、欧州の強豪リーグとはかなりの差がある。

それでも今までと比べると、スカパーの放映権料年間50億と比較すると、4倍近く放映権収入がアップする。

単純に考えて、その増加分だけ各クラブへの分配も増える事となり、収入不足からギリギリの運営をしていたクラブも、多少楽な運営が出来るようになるだろう。サッカークラブ運営に関しては、大きな追い風だ。

もちろん全クラブ収入増となるだろうが、順位、カテゴリーで傾斜がつくのは当然の事。各リーグで配分の仕方は特徴があるようだが、上位のクラブほど多くなるのはどこでも変わらない。

最後に、サガンドリームスの竹原社長が、「来年は上位組、下位組に分かれていくはじまりになる」みたいな事を仰っていたが、ここしばらく下克上的に予算の少ないクラブが勝ち上がっていくような展開がJリーグには多く、上位と下位の差をそう感じないリーグとなっているが、こうした予算増や傾斜配分により、これから上位クラブと下位クラブが明確に分かれていくという読みがあるのだろう。

アジア市場を中心とした海外展開

国内のマーケットだけならば、これから人口減の日本において市場は限られている。外資の資本参加も開放され、マリノスにシティグループが資本参加している。欧州リーグがこれだけ巨額の放映権収入があるのは、全世界が顧客でありえるからで、Jリーグも遅きに失したとはいえ、海外マーケットの深耕が重要になる。

サガン鳥栖もアトレイティコマドリードと親善試合をしたが、強豪クラブも虎視眈々とアジア市場を狙っていてシーズン前にはアジアツアーなどをよく行っている。

特に成長著しいアジア圏へのプレゼンスを高めることは非常に重要。日本がまだブランド価値を持っている今ならまだ食い込める余地がある。講演会中のスライドでは中東や東南アジアなどのリーグとの提携について触れられていた。

ひとつ気になっていたは、中国リーグとの提携がなかった点。提携がなくてもマーケットを開拓できればなにも問題がないのだが、世界一の巨大市場だけに中国市場へのアプローチは必要だと思う。

講演会での一例として、水戸ホーリーホックの事例が引かれていた。水戸は今年、ベトナムのメッシと言われている選手を獲得した。それが関連して、ユニフォームスポンサーとしてベトナム企業が決まり、茨城空港にはベトナム空港が就航したという。中田がペルージャに行って日本でペルージャが有名になったが、それと似たような状況がベトナムで起きたという。

近年はベトナムのみならず、マレーシアなどからJリーグ入りする選手がいる。まだ目立った活躍は見せていない。

こうした市場を広げていく動きの先には、外国人枠の拡大も当然視野に入っていくだろう。日本人の為だけJリーグではなく、所属するプレーヤーも国際化していくのは避けられない。

また、講演会の後の竹原社長の話でもあったが、韓国人選手がいるにも関わらず韓国語のHPもない。片手間の仕事ではなく、狙いをもった市場の開拓が必要なるであろう。フロントスタッフの拡充は選手人件費拡大の後、そのような話もあったが、ダゾーンマネーもそうした投資に向けるクラブがあっても面白い。

その他雑感。

その他面白かったのは、2ステージ制の解消について。来季はまた1ステージに戻ることが決まっているが、話し方がお上手なので直接的な表現はしなかったが、前任の大東氏が決定した流れで2ステージを推進してきた事を小出しにされていた。ご自身がレッズサポだったのに、(もちろん公平性を意識されて講演会でそういう表明はしていない)2ステージに対する不満からレッズサポから大ブーイングを食らったりしているので、2ステージには相当痛い目を見てきてのだろうと思った。

それにしても、言葉の選び方、ジョークを交えつつも、きっちりと話していいところときちんと締めるところ、ご自身がレッズサポであった事を伏せたり、余計なリップサービスをしたりしないところ、そういう使い分けをしっかりされていて、さずがサラリーマンから上り詰めて社長になられた方だなと感じた。Jリーグの方向性は悪くないな、そう思わせてくれる講演会だった。多忙なこととは思いますが、長く頑張って頂きたい。

 -クラブ経営, サガントス, 備忘録

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